今回は、ムスタングベース(ショートスケールのベース)を、現代的な音楽にも対応できるセッティング。実戦(バンド)で使える音で鳴らすコツについて書きます。

1)予備知識
最初に予備知識です。
よくある誤解に…
ショートスケールのベースは、
- ローが出ない
- 弾きやすい
というのがあります。
これは間違いです!
実はショートスケールは、低域が出過ぎる傾向にあり、逆に高域が苦手です。
結果、輪郭がハッキリしない音色になります。
いなたい、モコモコした音ですね。
※歌謡曲やアコースティック編成のバンドには、めちゃくちゃ合います。
ショートスケールの輪郭がボヤける原因考察 - ムスタングベース友の会!
また弦の張力が弱いため、運指はやりやすいのですが、ピッキングがシビアになります。「弦が暴れる」と表現される状況になります。
必ずしも弾きやすい楽器とは言えません。むしろ難しく、上級者、玄人向きと言えます。
つまり、この2点をカバーすることが使いこなすコツになります。
2)ピック弾き
ムスタングベースの音を良くする、輪郭のハッキリした芯のある音を出すために一番手っ取り早いのは、ピック弾きです。
ピック弾きをすることで、指では出せないアタックのある輪郭がハッキリした音を出せます。
3)テンションの強い弦を使う
ラウンド弦ならば、4弦が105以上。
出来れば、110がオススメです。

つまり、低音弦が太いことがポイントです。
4弦がボヤけやすいため、4弦がしっかりしたテンションの弦を選択することがポイントです。
110までは、ラウンド弦ならロングスケール用が張れます。それ以上は、加工する必要があります。
ロングスケール弦を加工する裏技! - ムスタングベース友の会!

画像は、フェンダー8250M。
45-110です。
ロングスケール用ですがペグに巻けます。
チューニングもちゃんと合います。
フラットワウンド弦もオススメです。

ラベラからムスタングベース専用弦が売られております。
フラットワウンド弦の場合は、ミディアムスケール用を使用してください。
ロングスケール用のフラットワウンドも張れなくはないのですが、巻線部分がペグのポストに掛かってしまいます。

画像の4弦を見てください。
フラットワウンド弦の場合、弦の腰が強く、不自然に内側に曲がります。これが原因で 1フレットのFがシャープします。
また、無理に曲げると切れてしまったりします。
ラウンド弦みたいに素直に巻けない上に、巻線を解けません。
フラットワウンドの場合は、ミディアムスケール専用弦をオススメします。
4)弦高を高くする
ロングスケールよりも、弦高を高いセッティングにしてみてください。
指弾きなら…
4弦→3〜3.5ミリ
1弦→2.5〜3ミリ
ピック弾きでも…
4弦→2.5〜3ミリ
1弦→2〜2.5ミリ
高めにセッティングして、しっかり弦を揺らしてピッキングすることがポイントです。
5)ピックアップを近くする
ムスタングベースのピックアップは、ポールピースの上にカバーがあります。

カバーの厚み分、弦から離れます。
プレベの標準的なピックアップの高さが、最終フレットをおさえて、4弦→3ミリ、1弦→2.5ミリですが…ムスタングベースには低すぎます。
楽器店でムスタングベースを購入すると、たぶんこの高さにセッティングされています。これがパワー不足を感じる誤解です。遠いのです。
※リペア屋さんや販売店でも、ショートスケールのセッティングがあまり浸透していないように感じます。
私自身は、12フレットを押さえて調整します。
全部3ミリ
に調整しています。
6)音作り
音作りですが…
ローカット
ミドルしっかり
ハイをややブースト
これが基本です。
恐らく、ムスタングベース(ショートスケール)を使いこなせない人の大半が逆をやっています。
可愛らしいイメージで、低域が出ないと勘違いしやすいらしく、ローをブーストする人がたくさんいます。
※ライブでは、PAさんが出過ぎたローをカットしてくださるため、相対的にミドルが引っ込んでスカスカな音になってしまいます。
もしイコライザーを使用される場合には…
50Hz以下はバッサリカット。
800から2kHzをやや持ち上げる。
4kHzを上げる。
この3つをやると、良い感じになります。
「カマボコ型」の音作りですね。
特に800から2kHzのハイミッドを持ち上げることで、音がしっかり抜ける様になります。
7)アナライザー
ショートスケールはローが出る…と説明しても、納得がいかない方は、音の波形を見ることをオススメします。
下の画像は、ローが出ない、非力と言われるブロンコベースの波形です。インターフェース直結です。
全く同じ条件で、プレベ、ジャズベを比較しています。低域と高域を見比べてください。


ローは、ジャズ、プレベと遜色ないくらい出ています。足りないのは800Hz以上のハイミッド、ハイです。
アンプ直結の場合には、アンプのBASSを少し絞って、逆にTREBLEを上げてください。BASSを絞っても低域がしっかり出ます。音が抜けない時は、ミドルを上げてください。
また、エフェクターを選ぶ際には、自分の楽器に必要な帯域を動かせることが、選択の目安になるかもしれません。
※ムスタングベースで使う場合には、ミドルのあるプリアンプやエフェクターがオススメです。
8)なぜローが出ないと感じるか?
それは、弦の張力不足で基音が引っ込んで聴こえるからです。
ショートスケールの輪郭がボヤける原因考察 - ムスタングベース友の会!
ショートスケールのベースに、フラットワウンドを張る人が多いのは、倍音が抑制され相対的に基音が出るからです。
ただ、現代的な音楽(J-POPなど)をやりたい人には、先ほども書いた様に4弦が太いラウンド弦がオススメです。コンプを掛けて、歪ませるとプレベと変わらない感じに使えます。
9)改造
もし改造される場合、指弾きメインな方にはポットの数値を300kΩに変更するのがオススメです。

元々が250kΩなので、抜けが良くなります。
500kΩはやり過ぎになるため、ジャンル(めちゃくちゃ歪ませる人)以外には、300が無難です。
また、ノードストランドのピックアップがオススメです。

このピックアップは、音がタイトになります。
プレベに近い感じになります。
またポールピースが各弦に2本ずつあるため、弦を拾いやすくなり弾きやすくなります。

サウンドハウスさんで購入できます。
故障時の交換用にもオススメ。
10)最後に
以上は、2025年2月時点での「ムスタングベースを良い音で鳴らす私的な研究」の過程です。
なんと言っても、ムスタングベースに関する…
- 演奏技術
- セッティング
- 音作り
などに関する情報、資料がほとんど無い。
圧倒的に情報不足です。
それだけショートスケールはマイナーな存在で、使い方が知られておりません。
もし、ご意見や新しい情報などがありましたらお知らせください。内容は随時更新、真逆になる場合もありますので、ご了承ください。
よろしくお願いします。